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取引の一連性

参照すべき最高裁判例

継続的な金銭消費貸借取引において,いったん完済した後,しばらく取引中断期間があって,その後,再度貸付けが行われた場合には,「取引の一連性」が問題となります。

この問題は,いったん債務を完済した後,取引中断期間を経て再度借入れを行った場合,完済によって発生した過払い金を新たな貸付け債務に充当することができるかという問題です。

この問題に関連して,最高裁判例がいくつか出されていますので,これらの判例をどのように解釈するのかが問題となります。

参照すべき最高裁判例は,以下のものです。

  1. 最高裁平成19年2月13日第三小法廷判決(民集61巻1号182頁)
  2. 最高裁平成19年6月7日第一小法廷判決(民集61巻4号1537頁)
  3. 最高裁平成19年7月19日第一小法廷判決(民集61巻5号2175頁)
  4. 最高裁平成20年1月18日第二小法廷判決(民集62巻1号28頁)
  5. 最高裁平成24年9月11日判決第三小法廷判決(民集第66巻9号3227頁)

最判平成19年2月13日

判示
貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合において,第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生し(以下,この過払金を「第1貸付け過払金」という。),その後,同一の貸主と借主との間に第2の貸付けに係る債務が発生したときには,その貸主と借主との間で,基本契約が締結されているのと同様の貸付けが繰り返されており,
  • 第1の貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていたとか
  • その貸主と借主との間に第1貸付け過払金の充当に関する特約が存在するなどの特段の事情のない限り

第1貸付け過払金は,第1の貸付けに係る債務の各弁済が第2の貸付けの前にされたものであるか否かにかかわらず,第2の貸付けに係る債務には充当されないと解するのが相当である。

なぜなら,そのような特段の事情のない限り,第2の貸付けの前に,借主が,第1貸付け過払金を充当すべき債務として第2の貸付けに係る債務を指定するということは通常は考えられないし,第2の貸付けの以後であっても,第1貸付け過払金の存在を知った借主は,不当利得としてその返還を求めたり,第1貸付け過払金の返還請求権と第2の貸付けに係る債権とを相殺する可能性があるのであり,当然に借主が第1貸付け過払金を充当すべき債務として第2の貸付けに係る債務を指定したものと推認することはできないからである。

評釈

本判決は,基本契約が締結されずに行われた二つの証書貸付け事案について判断したものです。いわゆる完済後再貸付けの事案については,特段の事情がない限り,第1取引に基づいて発生した過払金を,第2取引によって生じた借入金債務に充当することができないことが示されました。

もっとも,「第1の貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていた場合」を特段の事情として挙げている点や,過払金の充当を否定する理由づけとして「不当利得返還請求権行使の可能性」「相殺の可能性」を挙げている点を無視することはできません。

また,「一つの借入金債務に係る過払金を他の借入金債務へ充当することが認められるか否かについては,借主の充当指定についての意思解釈の問題である」ということを示したことも重要です。

最判平成19年6月7日

判示
同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において,借主がそのうちの一つの借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息を任意に支払い,この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合,この過払金は,当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り,弁済当時存在する他の借入金債務に充当されると解するのが相当である。

これに対して,弁済によって過払金が発生しても,その当時他の借入金債務が存在しなかった場合には,上記過払金は,その後に発生した新たな借入金債務に当然に充当されるものということはできない。しかし,この場合においても,少なくとも,当事者間に上記過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するときは,その合意に従った充当がされるものというべきである。

本件各基本契約に基づく債務の弁済は,各貸付けごとに個別的な対応関係をもって行われることが予定されているものではなく,本件各基本契約に基づく借入金の全体に対して行われるものと解されるのであり,充当の対象となるのはこのような全体としての借入金債務であると解することができる。

そうすると,本件各基本契約は,同契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金の内制限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生した場合には,上記過払金を,弁済当時存在する他の借入金債務に充当することはもとより,弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。

評釈

本判決は,クレジットカード契約(カードローン契約)について判断したものですが,基本契約の中に過払金充当合意が含まれることを認めたものです。

そして,基本契約が締結され,かつ基本契約が解約されていないのであれば,取引の空白期間が何年あろうと発生した過払金は原則として新たな借入金債務に充当されることを確認したものと評価することができます。

本判決の担当調査官も,「本判決の考え方は,同種のカードローン契約についても及ぶほか,基本契約に基づき,継続的に貸付けと返済が繰り返される金銭消費貸借で,債務の返済が借入金の全体に対して行われると解される取引(支払方式をいわゆるリボルビング払いとするものが典型的であるが,これに限られるものではないように思われる)についても及ぶ」と述べています[ジュリスト1346号82頁]。

最判平成19年7月19日

判示
本件各貸付けのような1個の連続した貸付取引においては,当事者は,つの貸付けを行う際に,切替え及び貸増しのための次の貸付けを行うことを想定しているのであり,複数の権利関係が発生するような事態が生ずることを望まないのが通常であることに照らしても,制限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生した場合には,その後に発生する新たな借入金債務に充当することを合意しているものと解するのが合理的である。

上記のように,本件各貸付けが1個の連続した貸付取引である以上,本件各貸付けに係る上告人とAとの間の金銭消費貸借契約も,本件各貸付けに基づく借入金債務について制限超過部分を元本に充当し過払金が発生した場合には,当該過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。

評釈

本判決は,基本契約を締結せずに行われた多数回の金銭消費貸借取引について判断したものです。

基本契約を締結せずに行われる証書貸付けの場合,借換えや貸増しなどの度に別個の契約が成立していると評価することも法形式的には可能であり,最判平成19年2月13日の趣旨からすると,このような場合には,一切過払金の充当を認めないという処理もあり得るところでした。

ところが,本判決は,証書貸付けであっても,借入れと返済が繰り返し行われている場合には,将来の貸付けが想定されているので,1個の連続した貸付取引であると評し,なお過払金を新たな借入金債務に充当する合意があることを認め,過払金充当合意が認められる範囲を拡張したものと評価できます。

最判平成20年1月18日

判示
同一の貸主と借主との間で継続的に貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務の各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,過払金が発生することとなった弁済がされた時点においては両者の間に他の債務が存在せず,その後に,両者の間で改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には,第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情のない限り,第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は,第2に基本契約に基づく取引に係る債務には充当されないと解するのが相当である。

そして,

  • 第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間
  • 第1の基本契約についての契約書の返還の有無
  • 借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無
  • 第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況
  • 第2の基本契約が締結されるに至る経緯
  • 第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同

等の事情を考慮して,第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には,上記合意が存在するものと解するのが相当である。

評釈

本判決は,要するに「基本契約に基づく取引が完済に至った後,あらためて基本契約が締結された場合」の充当関係について述べたものです。

最判平成19年6月7日及び最判平成19年7月19日は,「基本契約が締結されていないが,事実上1個の取引と言い得る場合」,ないし「同一の基本契約に基づいて再貸付けが行われた場合」には,について判断したものでした。したがって,最判平成19年2月13日の趣旨からすると,別個の基本契約に基づく再貸付けの場合には,理論上「過払金の充当を一切認めない」という処理もあり得たところでした。

ところが,本判決は,別個の基本契約に基づく再貸付けの場合でさえも,一定の場合には過払金の充当が認められることを明らかにしました。すなわち,過払金の充当が認められる範囲を一層拡張したという積極的意義を有するものと理解すべきでしょう。

最判平成24年9月11日

判示
一般的には,無担保のリボルビング方式の金銭消費貸借に係る基本契約(以下「第1の契約」という。)は,融資限度額の範囲内で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることが予定されているのに対し,不動産に担保権を設定した上で締結される確定金額に係る金銭消費貸借契約(以下「第2の契約」という。)は,当該確定金額を貸し付け,これに対応して約定の返済日に約定の金額を分割返済するものであるなど,第1の契約と第2の契約とは,弁済の在り方を含む契約形態や契約条件において大きく異なっている。

したがって,上記イの場合(注:同一の貸主と借主との間で無担保のリボルビング方式の金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引が続けられた後,改めて不動産に担保権を設定した上で確定金額に係る金銭消費貸借契約が締結された場合)において,第2の契約に基づく借入金の一部が第1の契約に基づく約定残債務の弁済に充てられ,借主にはその残額のみが現実に交付されたこと,第1の契約に基づく取引は長期にわたって継続しており,第2の契約が締結された時点では当事者間に他に債務を生じさせる契約がないことなどの事情が認められるときであっても,

  • 第1の契約に基づく取引が解消され第2の契約が締結されるに至る経緯
  • その後の取引の実情

等の事情に照らし,当事者が第1の契約及び第2の契約に基づく各取引が事実上1個の連続した貸付取引であることを前提に取引をしていると認められる特段の事情がない限り,第1の契約に基づく取引と第2の契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価して,第1の契約に基づく取引により発生した過払金を第2の契約に基づく借入金債務に充当する旨の合意が存在すると解することは相当でない。

評釈

本判決は,いわゆる不動産担保切替の事案について,最高裁が判断を示したものです。

最高裁は,不動産担保切替の事案の場合も,最判平成20年1月18日の基準によって判断するとの立場を明確にしました。

その上で,無担保による取引に基づいて過払金が発生した後,不動産担保を設定して(極度額方式のリボルビング取引ではなく)1回限りの確定額を貸し付け,その後は追加借入れをすることなく毎月分割返済のみを継続している事案については,リボルビング方式による無担保取引とそうではない不動産担保取引との契約内容が大きく異なっていることを理由に,取引の一連性を否定しました。

一方,(本判決は明言していないものの)不動産担保取引がリボルビング方式である場合には,無担保取引と不動産担保取引との基本的な相違は,担保権設定の有無のみですので,通常は取引の一連性を肯定することになるものと思われます。

なお,本判決には田原睦夫裁判官による補足意見が付されています。

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