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示談案の読み方

一般的な示談案の構成

交通事故賠償においては,個々の損害項目を積算することによって賠償金の総額を計算するという方法が採られています。

したがって,まずは個々の損害項目の意味について理解することが重要です。まずは,相手方保険会社から提示される一般的な示談案における損害項目の構成をご紹介します。
 

  1. 治療関係費

    通常の場合,治療費,通院交通費,入院付添費,入院雑費,診断書作成費などの積算となっています。

    最初の段階で保険会社から提示される示談案には,通院交通費や入院付添費などが含まれていないケースが散見されます。

     
  2. 休業損害

    治療が終了するまで(症状固定まで)に生じた減収部分に対する賠償です。家事労働者(主婦・主夫)の場合にも損害は発生します。

     
  3. 入通院慰謝料(傷害慰謝料)

    治療が終了するまで(症状固定まで)のケガによる精神的苦痛に対する賠償です。

     
  4. 後遺症逸失利益 または 死亡逸失利益

    後遺症が残ってしまった(後遺障害等級の認定を受けている場合),あるいは被害者が亡くなってしまったことによって,将来の収入を得られなくなったことに対する賠償です。

    後遺症逸失利益と後遺症慰謝料との区別が無く,一括して「後遺症に対する賠償」として記載されているケースもありますが,このような示談案には不当なものが多くみられます。

     
  5. 後遺症慰謝料 または 死亡慰謝料

    後遺症が残ってしまった(後遺障害等級の認定を受けている場合),あるいは被害者が亡くなったことによる精神的苦痛に対する賠償です。

     
  6. 減額事由

    被害者側にも落ち度がある場合(過失相殺),自賠責保険や労災保険などにより損害の一部について填補を受けている場合(損益相殺),治療費が保険会社から医療機関へ直接支払われている場合など,賠償金から減額すべきとされる部分です。

示談案のチェックポイント

次のような示談案は,「裁判をすればより多額の請求ができる」ケースです。

保険会社から提示された示談案が次のような内容であれば,示談を成立させる前に弁護士へご相談いただくことをお勧めします(なお,これらは典型的なケースですので,賠償額の増額が望めるケースは以下のものに限られません)。
 

①傷害慰謝料(入通院慰謝料)が通院実日数をベースに計算されている場合

弁護士基準では,傷害慰謝料(入通院慰謝料)の計算方法について,入通院の「期間」をベースに計算することになっています。これに対して,自賠責基準では「通院実日数」をベースにした計算方法が採用されています。

したがって,傷害慰謝料(入通院慰謝料)が,通院実日数をベースに計算されている示談案は,弁護士基準を下回る自賠責基準で計算されている可能性が高いと言えます。
 

②被害者が家事従事者(いわゆる専業主婦の方)の場合で,休業損害が損害項目に含まれていない場合

弁護士基準では,被害者が家事従事者である場合にも,賃金センサスの女性労働者の全年齢平均賃金額(平成30年版では382万6300円)を基礎として,休業損害を請求できるのが通常です。

したがって,被害者が家事従事者であることを理由に休業損害を支払わないという内容の示談案は,不当なものである可能性が高いと言えるでしょう。
 

③休業損害について休日を含んだ平均日額を算定基礎としている場合

保険会社の基準では、ほぼ例外なく,事故前3か月の給与について休日を含んで平均日額を算出し,これを実際に休業した日数に乗じています。裁判では,休日を含まずに実際の稼働日数で平均日額を算出し,これを実際に休業した日数に乗じた計算が広く認められています。

具体的に計算してみると,その差がよく分かります。

・事故前3か月(90日間)の給与が90万円、稼働日数が60日、休業日数が50日として。

(示談案)90万円÷90日×50日=50万円

(裁判例)90万円÷60日×50日=75万円

この点は示談交渉では保険会社が中々認めないところですが、裁判をすればより多額の賠償が認められる可能性があります。

 

④後遺障害逸失利益の計算において,労働能力喪失期間が不当に制限されている場合

弁護士基準では,後遺症逸失利益の計算において,労働能力喪失期間は,原則として症状固定時から67歳までの年数とするものとされています(ただし,むち打ち症の場合には,労働能力喪失期間が5年~10年に制限される場合が多いです)。

したがって,理由なく労働能力喪失期間が制限されている場合は,不当な示談案である可能性がありますので,要注意です。

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